【パリコレ史上、もっともマニアックなコレクション】UNDERCOVERの2006SSの「T」期を解説

FASHION

【図画工作なフェルト服】UNDERCOVERの「Arts&Crafts」期を解説」では、

  • 図画工作な「フェルトを切り貼りした服」
  • ターゲットは大人の女性
  • カルト的人気アイテムの85デニム、68デニム

という3つのキーワードをもとに、UNDERCOVERの2005AWコレクションの「Arts&Crafts」期について書きました。

 

まだ読んでいない方は、ぜひ読んでみて下さい。

 

図画工作な服を作った2005AW「Arts&Crafts」。その次のシーズン2006SSのテーマは「T」です。

まさかの英単語一文字。

 

mae-nishi

「T」はTシャツの “T” からつけました。

 

 

2006SS 「T( BUT BEAUTIFUL Ⅳ )」期

僕が集めたT期の服たち。

 

今回の記事では、

  • 架空の5つのバンド「THEE CROUH」「CHUUUT」「KLAUS」「THE SSSSS」「THEO BURP」
  • ジャーマン・プログレッシブロックからのインスパイア
  • 立体裁断を用いたドレーピング

この3つのキーワードをもとに記事を書きました。

 

架空の5つのバンド

T期の服をデザインするにあたり、高橋氏は架空の5つのバンドを考えました。

 

そのバンド名はこんな感じです。

  1. THEE CROUH
  2. CHUUUT
  3. KLAUS
  4. THE SSSSS
  5. THEO BURP

 

ちなみに

  • 「CROUH」が【かがむ、しゃがむ、うずくまる】
  • 「BURP」は【げっぷ】
  • 「KLAUS」はドイツ人によくいる名前

という意味です。

 

この架空のバンドの名前・Tシャツのグラフィックの方向性は、北村信彦氏(ヒステリックグラマー・デザイナー)と決めました。

 

ちなみにジャーマン・プログレを、高橋氏に紹介したのは北村氏。

実は2005SSでオマージュを捧げたヤン・シュバンクマイエルを、高橋氏に教えたのも彼だとか。

 

 

高橋氏は、架空の5つのバンドのTシャツ、いわゆる“バンT”をデザインしました。

そして「T」期は、そのバンTをバラバラに解体にした後、再構築してジャケットやドレスを作ったシーズンです。

 

 自分が普段よく着ているTシャツからどんな面白いものが出来るか?と思ったのが始まりです。

インスピレーションは、最近よく聞いている60~70年代にはやったジャーマン・プログレッシブ・ロック。当時のバンドは政治活動や芸術活動を行っているコミューンから生まれたものが多くて、それをイメージして架空の5つのバンドを考えたんです。 

(中略) 

ショーに登場した作品は、そのミュージシャンたちが自分たちのバンドTシャツを使って作った民族衣装という設定です。

出典:『WWD』 vol.1333 P11 2005年10月31日発行

 

それではジャーマンプログレッシブロックとはどんな音楽なのか?

 

ジャーマン・プログレッシブ・ロック

下記はジャーマン・プログレッシブ・ロックの特徴です。

ジャーマン・プログレッシブ・ロック、特に70年代のそれについて考える際、特に重要なポイントが三つある。
第1は、エレクトロニクスの積極的導入。
第2は、フリー・ジャズや現代音楽からの影響。
そして第3は、サイケデリック/ヒッピー・カルチャーの局部肥大。
当時の名の知れたバンドのほぼすべてが、この三つのポイントのいずれかを、音作りの手法や表現スタイルの中に取り込んでいたと言っていい。

出典:「レコード・コレクターズ-ジャーマン・ロックの快楽的宇宙サウンド」
June,2000/Vol.19,No.6 P34

 

ジャーマン・プログレの主要バンドといえば、

  • CAN (カン)
  • AMON DUULⅡ (アモン・デュール)
  • ASH RA TEMPEL (アシュラ・テンプル)
  • Klaus Schulze (クラウス・シュルツェ)
  • Cluster (クラスター)

などが有名です。

 

この頃の高橋氏はジャーマン プログレッシブ ロックにハマっていました。

なのでコレクションのインスピレーション源もジャーマンプログレに。

 

mae-nishi

ここまでマニアックなテーマで洋服を作るデザイナーは高橋氏くらいですね。

 

Tシャツのグラフィック

UNDERCOVERはもともと手刷りのTシャツからスタートしたブランドです。

だからTシャツのグラフィックを考えるのは、高橋氏のもっとも得意とする分野。

 

「T」期は、高橋氏のTシャツのグラフィックのセンスが発揮されたコレクションです。

 

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上の写真が「T」期のTシャツ。

こちらは架空のバンドのひとつ、「KLAUS」をモチーフにデザインした一枚です。

 

またTシャツのグラフィックデザインのセンスと共に、もう一つ高橋氏のセンスが発揮されている要素があります。

 

それが立体裁断を用いたドレーピングです。

 

立体裁断を用いたドレーピング

上の写真は「T」期のワンピース。

何着ものTシャツが再構築されて一着のドレスになっています。

 

UNDERCOVERの初期のコレクション (97SSの『DRAPE』まで) では、立体裁断で洋服の型出しを行っていました。

 

「T」では、そんな初期のコレクションの立体裁断での型出し経験が活かされています。

背中から前につながっているパーツは・・・

 

実はロンTの袖なんです。

 

きっとTシャツをボディに当てて、ああでもないこうでもないと試行錯誤したコレクションなのでしょう。

 

「T」期のショーで使われた音楽は

ジャーマンプログレをテーマにしたショーの音楽は、もちろんジャーマンプログレ。

 

ショーのトラックリストは、

  • Popol Vuh〈Ah !〉
  • Tangerine Dream〈Pheadra〉
  • Brain Ticket〈To Another Universe〉
  • In The Summer Of The Mushroom〈I am Aware Of My Heart〉
  • Klaus Schulze〈Mental Door〉
  • Popol Vuh〈Hoisianna Mantra〉

Selected by 北村信彦氏/高橋盾氏/若槻善雄氏

この6曲です。

 

僕も学生時代に聴いてみたかったので、ディスクユニオンでCDを探しました。

しかしあまりにもマニアックな選曲のため、すべてのバンドのCDを見つけることはできませんでした 笑

今回この記事を書くために「Spotify」で曲を探してみたら大半の曲があったんです。

 

「Spotify」恐るべし・・・。

 

mae-nishi

「T」ほど、デザイナーが好きなサブカルチャーを打ち出したコレクションって、今までもこれからもUNDERCOVERにしかできないと思います。

 

 

「T」期の服が掲載された雑誌

「T」期の服が掲載された書籍をご紹介します。

  • 『CREAM』
  • 『Dazed & confused Japan』 #43
  • 『MEN’S NON-NO』 2006年 2月号 144~151p
  • 『HUgE』 2006年 4月号 110~117p

 

オススメは『Dazed & confused Japan』 #43

この中でオススメの雑誌は『Dazed & confused Japan』です。

「T」期の期間の高橋氏の日記が載っていて、何度読んでも飽きません。

 

 

まとめ

今回の記事では、

  • 架空の5つのバンド「THEE CROUH」「CHUUUT」「KLAUS」「THE SSSSS」「THEO BURP」
  • ジャーマン・プログレッシブロックからのインスパイア
  • 立体裁断を用いたドレーピング

この3つのキーワードをもとに記事を書きました。

 

「T」期の次のシーズン「GURUGURU」期では、高橋氏はBUT期のダークサイドの極みともいえるコレクションを発表します・・・。

【グルグルなド西洋のアイテム】UNDERCOVERの2006AW「GURUGURU」』では、その「GURUGUR」について書きました。

ぜひ読んでみてください。

 

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