「チェコの鬼才、ヤン・シュバンクマイエルへのオマージュ「BUT BEAUTIFUL Ⅱ」」という記事では、
- ヤンシュバンクマイエル氏へのオマージュ
- 服が服を食べている服
- 物が朽ちている様子
- 子供のような視点のファッションデザイン
という4つのキーワードをもとに、UNDERCOVERの2005SSシーズンの「BUT BEAUTIFUL Ⅱ」について書きました。
まだ読んでいない方はぜひ読んでみて下さい。
高橋氏は「BUT BEAUTIFUL…」では、3人の女性アーティストから影響を受けてコレクションを展開。
つづく「BUT BEAUTIFUL Ⅱ」では、チェコのシュルレアリスト、ヤン・シュバンクマイエル氏にオマージュを捧げました。
この2つのコレクションで、東コレ時代から持つUNDERCOVER特有の“ダーク・ファンタジーな世界観”をより深めた高橋氏。
そして「BUT BEAUTIFUL」シリーズの3シーズン目。
過去2シーズンは他のアーティストからの影響でコレクションをデザインした反動からか、
このシーズンで高橋氏は久しぶりに自分の内側から湧き出るアイディアで服をデザインします。

テーマは「Arts&Crafts」。邦題は「図画工作」です。
UNDERCOVERの2005AW 「Arts&Crafts (BUT BEAUTIFUL Ⅲ)」
上の写真は僕がブランド古着屋で8000円位で購入した、Arts&Crafts期のワンピース。
今回の記事では、3つのキーワードをもとにArts&Crafts期について書きました。
Arts&Crafts期を理解するための3つのキーワード
そのキーワードとは下の3つです。
- 図画工作な「フェルトを切り貼りした服」
- ターゲットは大人の女性
- カルト的人気アイテムの85デニム、68デニム
それではひとつひとつ説明していきます。
図画工作なフェルトを切り貼りした服
Arts&Crafts期を一言で言うならば「フェルトを切り貼りした服」です。
このアイディアは自身の子供がフェルトの人形で遊ぶ様子を見て、ひらめいたそうです。
フェルトで服を作るメリットは3つあります。
フェルトで服を作るメリットは3つありまして。
- 裁ち切りで使える
- パーツ同士を重ねての接着も可能
- 積層状に柄を出しても面白い
この3つのメリットがどういうことかと言うと・・・。
上の写真のようにフェルトを切り貼りして重ねて柄を作ることもできるんです。
ちなみにArts&Crafts期では、
- アニマル柄
- ストライプ柄
- ボア
など、あらゆる素材・柄をフェルトで作っています。
さらにショーでは、髪の毛と眉毛までフェルトで作られていました。
ターゲットは大人の女性
Arts&Crafts期で高橋氏は、
- 大人の女性が普段着とミックスして着られる服
- エレガントだけどUNDERCOVERらしさがある服
というコンセプトを念頭に置き、服をデザインしました。
大人の女性をターゲットにしたエレガントなコレクションということで、「デザインはあくまでシンプルに」と高橋氏はこだわりました。
しかし出来上がった服は良い意味で、デザイン過多になっています。
デザインのベースは定番アイテム
Arts&Crafts期では、
- テーラードジャケット
- シャネルジャケット
- ライダースジャケット
などなど。
いわゆる定番アイテムを多用しています。
普通なら「フェルトを切り貼りした服」という奇抜なアイディアで着られない服になってしまいます。
しかし、みんなが見慣れている「定番アイテム」をベースに使うことで、デザインに安定感があるんです。

そしてArts&Crafts期で、
もうひとつ忘れてはいけない定番アイテムがあるんです・・・
カルト的人気アイテムの85デニム、68デニム
Arts&Crafts期で使われた定番アイテムと言えば、デニムパンツもあります。
このシーズンには、ボロボロにクラッシュしたデストロイデニムを発表しました。
そのデニムパンツは、UNDERCOVERの中で名作アイテムと呼ばれる「85デニム」
85デニム
出典:君嶋麻耶 – WEAR
85デニムという名前の由来は定価が¥85000+税だったから。
今では、メルカリで20万円以上の値段が付くこともある。UNDERCOVERのアイテムの中では、名作中の名作アイテムです。
85デニムは「TUNE」などのストリートスナップ誌で、実際に着られているのを多く見ました。
ストリートでも着ている人が多いなど、Arts&Crafts期は着やすさとアイディアのバランスが良いシーズンです。

ちなみに85デニム以外にも、
名作アイテムと言われているデニムはあって・・・
68デニム、64デニム
出典:綾小路 翔 – WEAR
68デニムは2004AW「BUT BEAUTIFUL…」に発売されたデニムです。
膝下にあるカラーの刺繍糸が特徴で、オリジナルは刺繍糸が赤色です。
こちらも定価が68,000円+税だったことから、68デニムと命名されました。
68デニムは、85デニムとは違い何度も復刻されています。2010年にUNDERCOVERがzozotownに出店した際には、膝の刺繍糸が青色のものが発売されていました。
ちなみにレディスのものは定価64,000+税だったため、64デニム。
「Arts&Crafts」の服が掲載された雑誌
- 『Vogue Nippon』 2005年 ?月号 P120~129
- 『装苑』 2005年 10月号 P42~43
- 『HUgE』 2005年10月号 P124~131
- 『high fashion』 2005年 6月号 P242
- 『MEN’S NON-NO』 2005年 8月号 P152~159
最後にArts&Crafts期の服が掲載された雑誌の情報です。
オススメは『MEN’S NON-NO』
『MEN’S NON-NO』の2005年8月号の特集では、この特集の為にUNDERCOVERが自らコーディネートを組んでいます。
「SCAB」期のパンツを合わせていたり、Tシャツの裾をボロボロに切り裂いてあって、めちゃくちゃカッコいいんです。
まとめ
今回の記事では、
- 図画工作な「フェルトを切り貼りした服」
- ターゲットは大人の女性
- カルト的人気アイテムの85デニム、68デニム
という3つのキーワードをもとに記事を書きました。
Arts&Crafts期の服は、「UNDERCOVERが大人の女性のためのエレガントな服」を作ったコレクション。
正直Arts&Crafts期は、「SCAB」や「BUT BEAUTIFUL Ⅱ」の陰に隠れて、少し存在感が薄い印象があります。
これは「SCAB」や「BUT BEAUTIFUL Ⅱ」などの「アーティスティックな服」から、服のレベルがひとつ上がったことが原因かと。
「アーティスティックな服」から「着られるけどアーティスティックな服」になったからなんです。
少しリアルクローズよりになったから、少し地味さが出てしまった。

しかしArts&Crafts期は、UNDERCOVERファンの中では、カルト的に人気なシーズンの1つ。
Arts&Crafts期で「大人の女性のための服」を作ったジョニオ氏。
次のシーズンの「T」期では、大人の女性のためのという様子は残しながらも、ドレープ使いや流れるようなシルエットで、さらにフェミニンな服を発表します・・・。
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