少年マンガの主人公のようなファッションデザイナー【高橋盾氏】Part 2

文化でUNDERCOVERを立ち上げ、裏原宿に店をオープンし、東京コレクションで確固たるポジションを確立した高橋氏。

 

順調にブランドの規模を拡大しつづけてきた彼は、2003SSシーズンでついにはパリコレデビューをします。

 

 

クラストコアなメジャーデビュー「SCAB」

UNDERCOVERがファッションの王道舞台、パリコレで服のテーマに選んだのは「SCAB」でした。

 

まずは「SCAB」とは、どういう意味なのか?

scabとは

主な意味 (傷口にできる)かさぶた

出典:weblio

直訳すると「瘡蓋(かさぶた)」

 

そうです。

転んだ時に膝にできる、あの「かさぶた」です。

 

高橋氏がデザインしたのは、小さないろんなハギレをぬい合わせた服。

まるでクラストコアロックが好きな若者たちが履いているボロボロのパンツ。「クラストコアパンツ」のよう。

 

パリコレという王道の舞台に対して、そんなクラストコアな服で挑みました。

ショーのさいごには、カラフルなネオンカラーのブブカを着せたモデルを登場させるなど、ジャーナリストからは賛否両論あったコレクションです。

 

しかし川久保玲女史はこのコレクションの服を気に入って、実際に店舗でも服を買ったそうです。

 

 

「SCAB」はファンから、カルト的な人気のあるコレクションのひとつです。

 

当時のパッチワークパンツ。

通称クラストパンツは、今でもネットオークションやメルカリで、30万円以上の価格がつくこともあります。

 

しかしそんな「SCAB」コレクションよりも、ファンの間で絶大な人気を誇るコレクションがあるんです。

 

カルトの末期「BUT BEAUTIFUL」シリーズ

「BUT BEAUTIFUL」シリーズはTHE UNDERCOVERなコレクションなんです。

2004年から2006年の5シーズンに渡って、発表した連作コレクション。

 

東コレ時代からのダークファンタジーな世界観を極めに極めまくった服たちです。

 

  • ぬいぐるみみたいな服の「BUT BEAUTIFUL…」
  • 服が服を食べている「BUT BEAUTIFUL 2」
  • フェルトを切り貼りして作った「Arts&Crafts」
  • ジャーマンプログレを服で表現した「T」
  • 東洋の巻くという考えで作られた「GURUGURU」

「BUT BEAUTIFUL 2」は、各コレクションのキャラがたっているんです。

 

 

この連作シリーズで、海外のジャーナリストからの評価も高くなり、自分の世界観を築き上げた高橋氏。

 

しかしその次のシーズンからガラリとテイストの違うファッションを提案しだす。

 

それは海外で発表を続けるうちに、自身のデザインに足りないある要素を感じ始めたからなんです・・・。

 

UNDERCOVERの、日本人デザイナーとしての新境地「Purple」

「BUT BEAUTIFUL」シリーズで、ダークなファンタジーを突き詰めていった高橋氏。

つづく2007SS「purple」では、これまでのダークな世界観から一変、フェミニンで「セクシーな夜」の服を発表しました。

 

UNDERCOVERが、全シーズンまでのダークファンタジーな服のイメージを脱ぎ捨てたのには理由があります。

 

日本でUNDERCOVERの服を買うのは20~30代の男女が中心。

しかし海外でUNDERCOVERの服を手にとるのは40~50歳代の女性たち。

つまり大人の女性たちなんです。

 

だからデザインもそれに合わせて、大人の女性でも着れるようなデザインを意識しました。

 

「purple」はUNDERCOVERにとっての新境地、転換期と言われることが多いコレクション。

だけど僕はUNDERCOVERどころか、日本人ファッションデザイナーとしての新境地だと思います。

ここまで正統派なフェミニンなドレスを発表して、評価を受けた日本人デザイナーがこれまでいたでしょうか。

 

日本人デザイナーが海外で評価される時の服って、御三家デザイナーが切り開いたレールに乗っている「日本っぽい服」なんです。

 

でもUNDERCOVERは違った。

 

日本人デザイナーがもっとも苦手とする、セクシーな服というジャンルで勝負して、海外のジャーナリストからも評価を受けた。

これはやっぱり日本人デザイナーとしての新境地です。

 

最終奥義「ANATOMI COUTURE」

「purple」で日本人デザイナーとしての新境地を切り開いた高橋氏。

その後も、新しいイメージの服たちを次々に発表していきました。

 

そして2013秋冬にはUNDERCOVERの、高橋氏の最高傑作とも呼べる服を発表します。

 

それが「ANATOMI COUTURE」です。

 

「ANATOMI COUTURE」は高橋氏が、今までの服作りで吸収してきたすべての技を組み合わせた集大成的なコレクションなんです。

 

そんな「ANATOMI COUTURE」から感じられる高橋氏の技は、

  • 立体裁断によるデザイン出し
  • マルジェラのストリート的再解釈
  • 「臓器」というアングラなモチーフ
  • セクシーにひとさじの毒を盛る

などなど。

 

キャリア初期に行っていた立体裁断によるデザイン出し。初期に培っていた立体裁断での服作りも混じっています。

それはカフスやシャツのえりを組み合わせて作った服。

こういった服には、古着を再構築してオートクチュールを作るマルジェラのアーティザナルの要素も入っています。

 

またBUT期のダークを掛け合わせた「臓器」や「骨」などのアングラ感あふれるモチーフも登場します。

しかしグロテスクさは抑えてグッとカワイイ雰囲気にして。

 

そして「PURPLE」で培ったセクシーな夜の服の要素はランジェリーを解体して、再構築したドレスたちから感じられます。

 

「ANATOMI COUTURE」は、バクマンのシュージンとサイコーが苦労した末に書いた「PCP」みたいなコレクションなんです。

 

mae-nishi

 

このコレクションを見た時は、度肝を抜かれました。  

まとめ

今ではパリコレの常連となり、大御所感も漂ってきているブランドUNDERCOVER。

そしてそのデザイナーである高橋氏。

そんな高橋氏にも、その長いキャリアには紆余曲折がありました。  

デザインに迷いが浮かんだり、コレクションという形式に疑問を抱いたり。

まわりの人たちが自分のデザインした服を着ていないという時期もあったり。

 

しかし最後は必ず自身のデザインセンスだけで、現状の問題を解決していく高橋氏は、やっぱりカッコいい。

 

そんな少年マンガの主人公みたいな高橋氏に、みんな憧れるのだ。

僕も含めて。

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