UNDERCOVERが2004年秋冬から2006年秋冬にかけて連続で発表したコレクション。
それが「BUT BEAUTIFUL」シリーズです。
高橋さんは2004年秋冬の「BUT BEAUTIFUL…」では、3人の女性クリエイターから影響を受けて洋服をデザイン。
続く2005年春夏の「BUT BEAUTIFUL Ⅱ」では、チェコの鬼才シュルレアリスト ヤン・シュバンクマイエルにオマージュを捧げたコレクションを発表。
高橋さんは 2シーズンに渡って、自分以外のアーティストから影響を受けた洋服をデザインしました。
その反動からか、2005年秋冬の「Arts&Crafts」では、久しぶりに自分の内側から湧き出たアイデアで服をデザインしました。
「【図画工作なフェルト服】UNDERCOVERの「Arts&Crafts」を解説」では、
- 図画工作な「フェルトを切り貼りした服」
- ターゲットは大人の女性
- カルト的人気アイテムの85デニム、68デニム
という3つのキーワードをもとに、UNDERCOVERの2005年秋冬コレクションの「Arts&Crafts」について書いています。
まだ読んでいない方は、ぜひ読んでみて下さい。
UNDERCOVERの2006年春夏コレクション「T」
今回の記事では、BUT BEAUTIFULの3シーズン目の2006年春夏コレクションについてお話しします。
このコレクションのテーマは、「T」です。
このシーズンでは、架空の5つのバンドを考え、そのバンドのバンドTシャツをデザインしました。
そしてそのバンTを解体・再構築した服を発表しています。
自分が普段よく着ているTシャツからどんな面白いものが出来るか?と思ったのが始まりです。
インスピレーションは、最近よく聞いている60~70年代にはやったジャーマン・プログレッシブ・ロック。当時のバンドは政治活動や芸術活動を行っているコミューンから生まれたものが多くて、それをイメージして架空の5つのバンドを考えたんです。
(中略)
ショーに登場した作品は、そのミュージシャンたちが自分たちのバンドTシャツを使って作った民族衣装という設定です。
引用:『WWD』 vol.1333 P11 2005年10月31日発行
架空の5つのバンド
先ほどお伝えしたように、Tの服をデザインするにあたり、高橋さんは架空の5つのバンドを考えました。
それがつぎの5つです。
- THEE CROUH
- CHUUUT
- KLAUS
- THE SSSSS
- THEO BURP
ちなみにそれぞれ意味があります。
「CROUH」の意味は【かがむ、しゃがむ、うずくまる】です。
「BURP」の意味は【げっぷ】です。
「KLAUS」の意味は【ドイツ人によくいる名前】だそうです。
この5つの架空のバンドのTシャツのグラフィックデザインと名前は、ヒステリックグラマーのデザイナーである北村信彦さんと一緒に考えたそうです。
ちなみにジャーマン・プログレを、高橋さんに紹介したのは北村さん。
実は2005年春夏で、オマージュを捧げたヤン・シュバンクマイエルを、高橋さんに教えたのも北村さんだそうです。
高橋さんのTシャツのグラフィックセンスが爆発
UNDERCOVERはもともと手刷りのTシャツからスタートしたブランドです。またTシャツのグラフィックデザインのセンスと共に、もう一つ高橋氏のセンスが発揮されている要素があります。
高橋さんは、架空の5つのバンドのTシャツ、いわゆる“バンT”をデザインしました。
そして「T」は、そのバンTをバラバラに解体にした後、再構築してジャケットやドレスを作ったシーズンです。
それではジャーマンプログレッシブロックとはどんな音楽なのか?
ジャーマン・プログレッシブ・ロック
ジャーマン・プログレッシブ・ロック、特に70年代のそれについて考える際、特に重要なポイントが三つある。ジャーマン・プログレの主要バンドといえば、
第1は、エレクトロニクスの積極的導入。
第2は、フリー・ジャズや現代音楽からの影響。
そして第3は、サイケデリック/ヒッピー・カルチャーの局部肥大。
当時の名の知れたバンドのほぼすべてが、この三つのポイントのいずれかを、音作りの手法や表現スタイルの中に取り込んでいたと言っていい。
出典:「レコード・コレクターズ-ジャーマン・ロックの快楽的宇宙サウンド」 June,2000/Vol.19,No.6 P34
- CAN (カン)
- AMON DUULⅡ (アモン・デュール)
- ASH RA TEMPEL (アシュラ・テンプル)
- Klaus Schulze (クラウス・シュルツェ)
- Cluster (クラスター)
立体裁断を用いたドレーピング
UNDERCOVERの初期のコレクション (97SSの『DRAPE』まで) では、立体裁断で洋服の型出しを行っていました。
「T」では、そんな初期のコレクションの立体裁断での型出し経験が活かされています。
背中から前につながっているパーツは・・・
実はロンTの袖なんです。
きっとTシャツをボディに当てて、ああでもないこうでもないと試行錯誤したコレクションなのでしょう。
「T」期のショーで使われた音楽は
- Popol Vuh〈Ah !〉
- Tangerine Dream〈Pheadra〉
- Brain Ticket〈To Another Universe〉
- In The Summer Of The Mushroom〈I am Aware Of My Heart〉
- Klaus Schulze〈Mental Door〉
- Popol Vuh〈Hoisianna Mantra〉
Selected by 北村信彦氏/高橋盾氏/若槻善雄氏
この6曲です。
僕も学生時代に聴いてみたかったので、ディスクユニオンでCDを探しました。
しかしあまりにもマニアックな選曲のため、すべてのバンドのCDを見つけることはできませんでした 笑
今回この記事を書くために「Spotify」で曲を探してみたら大半の曲があったんです。
「Spotify」恐るべし・・・。
「T」ほど、デザイナーが好きなサブカルチャーを打ち出したコレクションって、今までもこれからもUNDERCOVERにしかできないと思います。
「T」の服が掲載された雑誌
「T」の服が掲載された書籍をご紹介します。- 『CREAM』
- 『Dazed & confused Japan』 #43
- 『MEN’S NON-NO』 2006年 2月号 144~151p
- 『HUgE』 2006年 4月号 110~117p
オススメは『Dazed & confused Japan』 #43
まとめ
今回の記事では、- 架空の5つのバンド「THEE CROUH」「CHUUUT」「KLAUS」「THE SSSSS」「THEO BURP」
- ジャーマン・プログレッシブロックからのインスパイア
- 立体裁断を用いたドレーピング
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