ユニクロのファッションディレクター滝沢直己氏が書いた『一億人の服のデザイン』の感想【ファッションデザイナー志望は必読!】

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滝沢直己氏をご存知でしょうか?

 

もしかしたら滝沢氏のことを知らない方も、いるかもしれません。

しかしそんな方でも、クローゼットの中には滝沢氏が関わった服が1着はあると思います。

 

なぜなら彼は、ユニクロのファッションディレクターだったから。

ファッションディレクターというのは、ユニクロが販売する洋服を統括するディレクター、ということです。

 

あなたのクローゼットにユニクロの服、ありませんか? ありますよね。

 

そういう意味で考えると、日本国民全員が滝沢さんが関わってきた服を着ているんです。

日本国民全員。そう1億人以上です。

今回の記事では、そんな滝沢氏の著書『1億人の服のデザイン』について書きました。

 

 

当記事を読んでいただきたいのは、つぎのような方です。

  • ファッションデザインに携わっている方
  • ファッション業界で働きたいと思っている方

 

まずは著者の滝沢直己氏の経歴について書きました。

 

滝沢直己氏とは

滝沢氏は、1982年に桑沢デザイン研究所を卒業後、三宅デザイン事務所に入社します。

そしてあの世界的デザイナー・三宅一生さんのデザインアシスタントとして働きだします。

 

アシスタントとして働きながら、滝沢氏は夜な夜なデザイン画を描き貯めていたそうです。

 

その後、滝沢氏はイッセイミヤケのメンズブランド「イッセイミヤケ メン」のヘッドデザイナーになります。

年から年メンズ部門のディレクションを行った後、レディス部門も統括することになります。

 

三宅一生氏退任後のイッセイミヤケブランドで、ヘッドデザイナーとして自分がチームを引っ張っていくのは、尋常じゃないプレッシャーだったと思います。

 

mae-nishi

僕には絶対ムリです

 

 

その後、滝沢氏はイッセイミヤケを独立。

独立後は、自身の名を冠したブランド「ナオキタキザワ」をスタートさせます。

 

しかしその独立のタイミングで、あのリーマンショックがあったんです。

ブランド発表後の3シーズンで、経営がうまくいかなくなりました。

「自由になったとき、なにを選択していいかわからなくなってしまった。ISSEY時代の延長でやればいいと思っていたのですが、すべてが中途半端だったように今となっては思います」

著者名『“逆境”が教えてくれたこと──デザイナー、滝沢直己』出版社 出版年 該当Pより

 

そんな中で滝沢氏に声をかけたのが、ユニクロの柳井社長でした。

柳井さんは滝沢氏にこう言います。

『滝沢さんは、どうしてその力をもっと多くの人のために使おうとしないんですか?』と。

 

そして滝沢さんはユニクロのファッションディレクターに就任します。

その後のユニクロはさらに勢いをつけ、佐藤可士和さんのブランディング、ヒートテック、エアリズムなどのヒット。

 

ユニクロの売り上げは伸びていきます。

 

『1億人の服のデザイン』は、ユニクロのファッションディレクターとして、1億人の服のデザインを行ってきた彼がを行う上での心構えについて書いています。

 

1億人の服のデザインの秘訣

あのメガブランド、ユニクロのデザインを行う上で、「どのような意識でデザインしていたか」が気になりませんか。

あのシンプルなデザインの服を。

 

滝沢氏は『1億人の服のデザイン』のなかで、「ただシンプルな服をデザインするだけではダメだ」と語っています。

1億人のための服のデザインとは、どうあるべきか。ものすごいチャレンジです。
ですが、エモーショナルなものは何もない、無味無臭の服をつくっていいわけではありません。デザインの痕跡がなければいけないし、袖を通した時の感動は、絶対に必要です。必然的にデザインしていかなければ感動は生まれません。

滝沢直己名『1億人の服のデザイン』日本経済新聞出版社 2014年 P21より

一見するとシンプルで、なんのデザインもされていないように見えるユニクロの服。

そんなユニクロの服の背景には、圧倒的な量のインプットと試行錯誤があります。

袖の太さなど何度も何度も仮縫いを重ねたと感じられるし、素材選びも考えに考え抜かれていると思います。

 

ユニクロの服はファッションデザインというよりも、家電製品や車などのプロダクトデザインに近い領域なんです。

 

イッセイミヤケとユニクロはかけ離れたブランド?

滝沢氏は、パリコレクションでも洋服を発表しているイッセイミヤケのデザイナーから、そんなプロダクトデザインの領域に近いユニクロのデザイナーに。

畑違いな挑戦のように見えますが、実はイッセイミヤケの服つくり自体もプロダクトデザインに近い領域で商品です。

 

そういう意味では、イッセイミヤケ時代の彼のデザインも、ユニクロのデザインとつながってくる。

 

両方とも「プロダクト」的な服を作るブランドだから。

 

ユニクロのプロダクトデザイン的なアイテム

  • ヒートテック
  • ウルトラライトダウン

 

イッセイミヤケのプドダクトデザイン的なアイテム

  • プリーツプリーズ
  • A-POC
  • 一枚の布

 

ユニクロのアイテムは市場を研究して研究し尽くして発表する「マーケットイン」なアイテムです。

たいしてイッセイミヤケ のアイテムは、突発的に発表されて世の中をガラリと変えてしまう「プロダクトアウト」なアイテム。

だからユニクロとイッセイミヤケ の洋服は、離れているように感じるんです。

 

ちなみに僕が考えるプロダクトデザイン的なファッションアイテムには、次のようなアイテムがあります。

  • リーバイスの501
  • ショットのライダースジャケット
  • MA-1
  • ヘインズのパックTシャツ

 

ふつうだったら半年で流行が終わってしまうファッションデザインも、プロダクトデザインの領域まで昇華させれば、50年後でも多くの人々に愛される服となります。

 

イッセイミヤケとユニクロ、両方のブランドで経験を重ねた滝沢氏、そんな彼がデザイナーとして活躍するために必要となってくる能力。

 

興味が出てきませんか?

本書には彼が考える「これからのデザイナーに必要となってくる資質」についても書いてあります。

 

これからのデザイナーに求められるのはプロデュース力です。

著者の滝沢直己氏は本書の中で、これからのデザイナーにとって大切になってくるのは、「プロデュース力」である。と、語っています。

 

今のデザイナーに求められているのは、プロデューサーとしての能力です。
もともとデザイナーは1枚のジャケットだって、布、糸、ボタンなど全体を、いろいろな要素を一着の服の中で構成し、まさにプロデュースして仕上げます。
(中略)
もの作りのプロセスを究めたうえで、ものを媒介にしたストーリーメイキングもできる。音楽だって知っている。デザイナーの総合力が問われる時代です。

滝沢直己著『1億人の服のデザイン』日本経済新聞出版社 2014年 P59〜60より

僕自身もデザイナーはデザインだけをできればいいと思っていた時期もありました。

しかし時代はすこしずつ変わっています。これからはもっと急激に変わっていくでしょう。

 

また別のページでも・・・

デザイナーにはプロデューサーの資質が求められます。プロデューサーは産地から売り場での見せ方まで、すべてを把握していないと、指示ができません。
(中略)
靴、服、バッグのみならず、建築やインテリアデザイン、広告やグラフィックにまで見聞を広める。

滝沢直己著『1億人の服のデザイン』日本経済新聞出版社 2014年 P93〜94より

 

このように滝沢氏は『1億人の服のデザイン』のなかで、2回も「これからのデザイナーに必要なのはプロデュース力である」と書いています。

 

このプロデュース力が必要というのは、企業内デザイナーだけではなく、今爆増中の「D2Cブランド」でも必要になってくるでしょう。

 

D2Cビジネスを立ち上げるには、「総合格闘技」と言えるほど様々なスキルが満遍なく必要となる。
(中略)
D2Cビジネスを立ち上げるのに必要なスキルや能力は、マーケティング、ブランディング、製品デザイン、パッケージデザイン、Webサイト設計、アプリケーション開発、ロジスティクス、生産管理、サプライチェーンマネジメント、SNS運用、店舗設計、店舗スタッフの採用と教育、カスタマーサポート•••••など、挙げればきりがない。

佐々木康裕著『D2C』NEWSPICKS社 2020年 P150より

 

どの要素も、ふかくふかくプロフェッショナルレベルに極める必要はありません。

浅くてもいいので、他の人よりも幅広い知識がある。

これからのデザイナーにはそんな「プロデューサー的な資質」が大切になってきます。

 

 

まとめ

また滝沢氏はイッセイミヤケとユニクロの活動以外にも、つぎのようなデザインを行っています。 

  • 自身の名を冠したブランド
  • 皇室の方々へ向けたオートクチュール
  • 21世紀美術館やMOMAの警備スタッフ、ヤンマーなどのユニフォーム

 

大衆向けの量産品。オートクチュールからプレタポルテ。そしてユニフォームのデザインまで。

彼が手掛けるデザインのフィールドは、本当に幅広いです。

 

さらにすごいのは、滝沢氏がそんなさまざまな環境・テイストを求められても、きちんと顧客の要望を満たせるデザイナーというところです。

 

こんなに幅広い経験があるデザイナーは、そうそういません。

だからこそ彼はユニクロで、「1億人の服のデザイン」ができるんです。

 

そんな異なる領域での経験を持つ滝沢氏ほど、「デザイナーであるデザイナー」はいないのかもしれません。

 

『1億人の服のデザイン』は、ファッションデザイナー志望の方には、ぜひ読んでほしい本。いや必読の書です。

もしもお時間ありましたら、手に取ってみてください。

あと佐藤可士和さんデザインのシンプルな装丁も、良いです。

 

 

参考サイト、書籍

当記事を書くにあたって、参考にしたサイトと書籍はつぎのとおりです。

 

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