ぼくが読書をする目的のひとつに「考え方を勉強するため」があります。
読む前と後で、自分の考え方に変化がある。このような読書体験が理想です。
この前、読んだ本でまさに「考え方を勉強するため」という目的にぴったりと合うものがありました。
読む前と後では、世界の見え方が180°クルッと回転してしまうような読書体験。
変な宗教の本とかではありませんよ 笑
その本とは、細谷功さんが書いた『具体と抽象』です。
なぜ世界の見え方が変わってしまうかというと、『具体と抽象』を読むことで「抽象化思考」を自分の中に取り入れられるから。
抽象化思考とは?
「抽象化思考とはなんぞや?」って感じではないでしょうか。
抽象化思考の前に説明したいのが、「具体」です。
具体と抽象はセットで考えておきたい存在。
現代の世の中は、何かと具体的なものが求められる世の中ではないでしょうか。
たとえばテレビのニュースでは、「具体的なわかりやすさ」が求められます。
ユーチューブの動画でも、ポイントを3つに絞って説明していたり。
みんなできるだけ具体的に説明を行って、内容をわかりやすくしています。
もちろん、それはそれですばらしいことです。
でも著者は『具体と抽象』の中で、抽象の重要性を書いています。
抽象
それでは、この本の主となるテーマの「抽象」について書いていきます。
あなたは「抽象」という言葉に対して、マイナスイメージを持っていないでしょうか?
たとえば「抽象的な話」とか。
あるいは「抽象的な説明」など。
上の2つの言葉から連想されるイメージは、どこかあいまいとしていて、わかりにくい内容ではないでしょうか?
でも抽象的なモノやコトの中には、良い要素もあります。
たとえば僕らが、ふだん生活している中でも、抽象化されたものがあります。
なんだと思いますか?
答えは「数」と「言葉」です。
数と言葉は「抽象化の結晶」のような存在。
抽象化の結晶①「数」
まずは「数」です。
ぼくらが日常生活であたり前のように使っている数という概念は、抽象化の要素が多く含まれています。
たとえば何かを数えるとき。
3個のりんごも、3頭の牛も、3棟のビルも、ぜんぶ「3」という数でとらえています。
これは果物、動物、建物という固有のモチーフを、1度自分のなかで「抽象化」を行って、まとめて同じとして扱っているんです。
このような思考の行程は、動物にはできません。
高度な知能を持った人間にしかできないことです。
上の内容から、数字が抽象化思考を経て生まれたものである、ということが理解できるでしょう。
ぼくらの生活から数字がない世の中って想像できません。
お金を数えることもできませんし、時間を捉えることもできなくなります。
つまり数字は人類が長い年月をかけて、手塩にかけて生み出した抽象化の結晶のような存在なんです。
そしてそんな抽象化の結晶がもうひとつあります。
それが「言葉」です。
抽象化の結晶②「言葉」
そして2つめの抽象化の結晶は「言葉」です。
言葉も数と同じように、複数のモノを「まとめて同じ」としてあつかっています。
たとえば「魚」。
ぼくたちは、マグロもヒラメもアジも、ぜんぶを1つにまとめて「魚」と呼びます。
こうやって大きくひとつにまとめていくことによって、メリットがあるんです。
それは「他者との意思の疎通」が、スムーズに行えるようになること。
もしも魚という言葉がなかったら、不便な世の中になるのではないでしょうか。
魚屋さんという言葉も成立しなくなります。
魚という言葉を使わずに、魚屋を表現しようとすれば、マグロとか、ヒラメとか、アジとか、を売っているお店となります。
かなり長ったらしい説明ですよね。
そのほかにも、新しい魚を説明するときになんて言えばいいでしょうか。
「マグロとか、ヒラメとか、アジとかの仲間で、マグロよりも少し小さい大きさで・・・」と、こちらも長ったらしい説明が必要になります。
つまり人間は、具体的な何かにたいして「抽象化」を行うことにより、他者とのコミュニケーションをスムーズに行えるようになりました。
このことにより、抽象的な概念を他者と交換できます。これが人類の発展に大きく貢献したことは言うまでもありません。
こう考えると、「抽象化思考」の偉大さに気づきますよね。
抽象化することでなにかメリットがあるのか?
でも本書で学んだ抽象化思考はなんの役に立つのでしょうか?
正直、「抽象化」っていう言葉を知ることで、実利にはなかなか役には立たないかもしれません。
ふだんの生活で抽象化を使うことって、少ないです。
でも「抽象化思考」は、新しいアイデアを生み出すときには便利。
抽象化思考を使って、新しいアイデアを作るときに役に立つのが、「アナロジー」という考え方なんです。
アナロジーには類推という意味があります。
他社の作品から影響を受けたアイデアを生み出したときの「パクリ」か、そうでないかの判断基準とはなんでしょうか?
ここで重要になってくるのが「アナロジー」です。
他社の作品の表面的な部分をパクっていたら、パクリです。
マンガでいうと、
・コマ割り
・ポーズ
・キャラクターデザイン
です。
でもその作者のマンガへの哲学とか、ストーリーの構成っていうもっと大枠の部分をパクったら、パクリではなくなるでしょう。
または作者が好きな画家を調べて、自分もその画家の作品から、ストーリーを考え出してみるなど。
つまりは抽象レベルでの真似を行うことによって、パクリもパクリではなくなるんです。
さいごに
具体、抽象、アナロジーといった言葉が書いてある『具体と抽象』。
このようなむずかしい言葉が書いてある本て、分厚くて、文章も難しそうに感じませんか?
でも『具体と抽象』は、ページも少なくて薄いです。そして文章もとてもわかりやすく読みやすいです。
各章のはじめとおわりに4コマ マンガがあり、そこも読みやすさを上げています。
なのですぐに読めます。早い人なら1日で読むことができるでしょう。
でも内容は、ものすごく深みと厚みがあるんです。
テキトーにビジネス書を何冊も買って、読むくらいなら、この本を何回も読むほうが絶対に良質な読書体験になる。
そう言い切れます。
ぼくも『具体と抽象』を死ぬまでにあと3回はかならず読もうと誓いました。
あなたも『具体と抽象』を読んで世界の見え方を変えてみませんか?
ということで本記事は終わりです。
さいごまで読んでいただき、ありがとうございました。
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