UNDERCOVERの「SCAB」を手仕事、解体と再構築、エスニックの3つのキーワードから解説。

FASHION

「神は細部に宿る」

この言葉を思い出す服があります。

 

決して美しいとは言えない、荒々しい手まつりで仕上げた布のかけら。その布のかけらからは、本来なら切られるべき糸が垂れ下がっています。

 

布のかけらはフリルを押しつぶし、ドレスのドレープの形を変えています。

 

しかし布のかけらによって、形がゆがんだドレスは、めちゃくちゃ美しい形を描いている。まるでサモトラケのニケのドレスのよう。

 

布のかけらは一つ一つを見たら、ただの みにくいボロキレ。

しかし集合することで、1着のドレス全体のバランスにまで影響をあたえます。

 

Akira
アキラ

まさに「神は細部に宿る」

 

そんなみにくくも美しい服のテーマは「SCAB」。

scabとは

主な意味 (傷口にできる)かさぶた

出典:weblio

「SCAB」を直訳すると「瘡蓋(かさぶた)」。転んだ時に膝にできる、あの「かさぶた」です。

 

「かさぶた」を、荒々しい手まつりでぬい付けた布のかけらで表現したコレクション。

安っぽい言葉ですが、一本の糸から作り手の魂をひしひしと感じる服たちです。

 

その服を発表したのは、今ではパリコレクションの常連となっているUNDERCOVERです。

 

「SCAB」はUNDERCOVERのパリコレデビューとなったシーズン。

 

エレガントでラグジュアリーなファッションの祭典、パリコレ。UNDERCOVERのデザイナー高橋氏は、その祭典に「SCAB(かさぶた)」というテーマで挑みます。

 

そのショーを行ったのは2002年の10月2日。2003SSのシーズンでした。

 

 
 

 

2003SS「SCAB」

SCAB(かさぶた)」を理解するためには、3つのキーワードがあります。

  1. クラスト感が溢れる手仕事
  2. 定番アイテムの解体と再構築
  3. 民族的な要素

今回の記事ではこの3つのキーワードをもとに、「SCAB」について解説していきます。

 

クラスト感が溢れる手仕事

上の写真は僕が学生の時に買った「SCAB」のブラウス。セカンドストリートで8,000円位で買いました。

 

手縫いでぬい付けた無数の布のかけら

様々な種類の布を、まさにかさぶたのようにクラスト感のある荒々しい手まつりで縫い付けています。

 

本当は切らないといけない糸がぶらりと垂れ下がっています。でもその糸がフリンジのように揺れて美しい。

 

 

定番アイテムの解体と再構築

続いてのキーワードは、「定番アイテムの解体と再構築」もポイントです。

「SCAB」では、ジャケットの袖を外して、脇に縫い付けています。プリーツのペプラムもファスナーで取り外しが可能になっています。

 

また袖を外して、ノースリーブになったジャケットのボロボロの肩口にある手縫いの糸もたまりません。

 

 

民族的な要素

最後のキーワードは「民族的な要素」です。

 

エスニックの要素を散りばめたのにはこんな理由があります。

「キルト・スカートやアフガニスタンのドレスといった様々な文化的、民族的要素をミックスしたかった。せめてこの場だけでも、様々な人々が平等な存在であってほしくて。私は、反戦コレクションを作ったのです」と高橋は語っている。

『FUTURE BEAUTY 日本ファッションの未来性』 平凡社 P127より引用

柄やブレスレッド、鈴にエスニックの要素が見られます。

 

極めつけはショーの最後に登場したネオンカラーのブルカでしょう。これには海外のメディアからの意見は様々でした。

 

 

SCABの再販アイテム

2002年当時発売されたパンツはヤフオクやメルカリでは、今では10万円以上で取引されています。

 

「SCAB」はUNDERCOVERのコレクションの中でもカルト的に人気なシーズンの一つです。

 

さてそんなカルト的な人気を誇る「SCAB」。「SCAB」のアイテムは、過去に2回だけ再販されています。

 

2010SS「Less but better」

1回目の再販があったシーズンは、2010SS「Less but better」のとき。

このシーズンでは、

・パンツ
・パーカー
・リュック
・ストール

の4つのアイテムが再販されました。

 

当時の高橋氏はハニカムでブログをやっていて、ブログで「SCAB」のアイテムが再販されることが紹介されました。

 

その中にはリュックの画像もあったんです。

 

そのリュックを見た僕はどうしても欲しくなって、バイト代をため込んで購入しました。

 

それがこのリュックです。

 

 

持ち手の部分は何年も使っているうちにボロボロになってしまいました。

今ではもったいないのと、持ち手が破れてしまっているので、使ってはいません。

だけど、このリュックだけは一生手元に置いておくでしょう。

 

2016SS「GREATEST」

「SCAB」が2回目に再販されたのは、2016SSの「GREATEST」というシーズンです。

このシーズンはミュージシャンが出す“ベストアルバム”のような内容のコレクション。

 

「GREATEST」では、過去の主要シーズンのアイテムがアップデートされて再販されました。

引用:https://www.vogue.co.jp/

「SCAB」ももちろんアップデートされて再販されており、ボロボロのクラストデニムも再販されていました。

 

このルックのパンツが欲しい。
欲しすぎる・・・。

いつか手に入れようとメルカリで狙っています。

 

ショーで使われた音楽

  • 1.『Rumble』 Link Wray
  • 2.『The Missing Link』Davie Allan&The Arrows
  • 3.『Blue moon』Elvis Presley
  • 4.『モア~最後の旅 (心の奥底に) 』 Nino Olivero

 

「SCAB」を特集していた雑誌&参考書籍

2003年当時に「SCAB」の服を特集した雑誌と、今回の記事の参考書籍を掲載します。

「SCAB」を特集していた雑誌

  • 『装苑』2003年 2月号 8~15p
  • 『FASHION NEWS』 2002年 3月号 68~71p
  • 『high fashion』 2003 年 5月号 72~81p
  • 『i-D magazine 』2003年 3月号 188~196p
  • 『relax』 2002年 12月号 32~53p
  • 『MEN’S NON-NO』 2003年 2月号 64~71p

このシーズンはパリコレデビューのシーズンということもあって、多くの雑誌でUNDERCOVER特集が組まれました。

 

『relax』と『i-D magazine 』はオススメ

その中でもオススメの雑誌は『relax』と『i-D magazine 』です。

 

『relax』は20P以上の巻頭特集が組まれており、かなり見ごたえがあります。

 

また『i-D magazine 』はUNDERCOVERのアトリエで撮影されており、よりこの当時の空気感が感じられる特集です。

 

他にも「ELLE」と「FIGARO」でも「SCAB」の服の特集が組まれていたました。しかし何月号か正確にわからないので、調べてまた追記します。

 

参考書籍

  • 『WWD』 2007年 6月25日号「なぜ、今『アンダーカバー』なのか?」
  • 『QUOTATION 一冊アンダーカバー』
  • 『UNDERCOVER JUN TAKAHASHI』 RIZZOLI社
  • 『FUTURE BEAUTY 日本ファッションの未来性』 平凡社

さいごに

今回の記事ではUNDERCOVERのデビューコレクション「SCAB」について書きました。このコレクションが発表されたのは、今からもう20年近く前。

 

当時のルックの写真は「VOGUE RUNWAY」にも上がっておらず、じっくりと見ることができません。この次の2003AW「paperdoll」からは見ることができるんですけどね・・・。

 

僕自身も高校生の時はグーグルの画像検索で、よく「SCAB」の画像を探していました。

 

今回の記事を書くにあたって、ピンタレストで画像を探してみました。ピンタレストでは「SCAB」の画像をたくさん見ることができます。

 

 

 

あなたもお時間あるときに、「SCAB」の服たちを見てみて下さい

 

神は細部に宿る。「SCAB」の服を見ていると、この言葉を実感できるかと思います。

 

 

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